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東京高等裁判所 昭和53年(ネ)1778号 判決 1979年3月28日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取消す。横浜地方裁判所昭和四九年(ケ)第二五八号不動産任意競売事件につき同裁判所が作成した配当表中『控訴人金一七二〇万円、東京国税局長金三四〇七万八五九七円』とあるのを、『控訴人金一九二六万四〇〇〇円(遅延損害金二〇六万四〇〇〇円、元本金一七二〇万円)、東京国税局長金三、二〇一万四五九七円』と変更する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、主文と同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠関係は、以下に付加、訂正するほか、原判決の事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

(一)原判決四枚目裏一〇行目の「あるに」を「あると」に改める。

(二)控訴人の主張

更生計画による権利の変更に関する会社更生手続の実務上、更生債権または更生担保権については変更後の元本債権のみが記載され遅延損害金は記載されないのが一般であり、本件でもそうである。しかし、右はあくまでも更生計画に基づき履行されるべき権利についての定めであり、また更生計画に記載されない権利の消滅に関する会社更生法二四一条の規定もかような権利について規定と解すべきである。更生担保権として認められない遅延損害金等が更生手続の廃止後に発生したような場合には、これについて更生計画に基づき行使されるべき権利と別個に考慮されるべきものであるから、更生計画においては通常これを記載しないのである。

それ故、本件更生計画における「更生手続前後の利息遅延損害金はすべて免除を受け、免除後の額を債権元本とする。」との記載は、後段の「免除後の額を債権元本とする」という点だけが本来的効力を持ち、前段の免除条項は本来記載しなくてもよい余事記載ともいうべきものである。従って、右条項を根拠に更生手続廃止後における法定遅延損害金も発生しないと解した原審の判断は実務の取扱いを無視し、更生担保権者に不測の損害を与えるものである。

理由

当裁判所も原判決と同じく控訴人の請求は理由がないと判断する。その理由は以下に付加、訂正するほか原判決の理由と同一であるから、これを引用する。

(1)原判決一二枚目表六行目の「第七号証によれば、」を「第七号証に前記当事者間に争いのない事実を合わせれば、」と改める。

(2)同一五枚目裏九行目の「免除しているし」の次に「(右免除の条項が、当審において控訴人が主張するように、効力のない余事記載と考えるべき理由は全く見出せない)」を加える。

(3)同一六枚目表六行目の末尾に続けて、「なお、本件の遅延損害金債権が更生担保権の範囲に属しないとすれば、更生手続開始後の損害金として更生債権に該当することになり、それが届出られ更生計画に記載されなければ失権することになるが、仮にそれが届出られ更生計画に記載されていたとしても、前掲甲第一号証によれば、本件更生計画において一般更生債権についても更生担保権の場合と同様更生手続開始決定日前後の利息損害金はすべて免除を受ける旨定められていることが明らかであるから、いずれにしても結論に差異を生じない。」を加える。

(4)同一六枚目表七行目から同裏一行目の「い。」までを次のとおり改める。

「以上のように解しても、更生担保権者は更生担保権の範囲に属する債権元本及び利息、損害金についてはその減免等の権利の変更に同意するかどうかの自由を有したものである(本件において適用される前記改正前の会社更生法二〇五条)から、更生担保権者に不測の損害を与えることにはならない(なお、同条の改正後においては五分の四の多数決で更生担保権の減免等の権利の変更がなされることになったが、右改正規定は各関係者の利害を調整しつつ会社更生の目的を達しようとするもので、これによって少数の反対者の意に反する結果を生ずることがあってもやむをえないところと考えられ、既に述べた結論を動かすに足りないものというべきである)。

よって原判決は相当で本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条の各規定を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 安岡満彦 裁判官 宮崎啓一 内藤正久)

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